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元気堂の漢方薬通信

VOL.154 アトピー性皮膚炎~その21~

アトピー性皮膚炎は、外部環境、ストレス、疲労、食事、ホルモンバランスや月経など、様々なことに影響されやすいため、なかなか手強い疾患です。漢方的にみるとその発症の根幹は、気・血・津液・精などの正気が不足することにより、皮膚バリアが低下したために、暑さ、寒さ、乾燥、湿気などの環境の変化やハウスダスト、食物などのアレルゲンに反応しやすくなることと考えられます。

この場合、根本原因である正気の不足を補うなどの治療を「本治」、アレルゲンなどにより誘発・増悪した症状を抑える治療を「標治」といいます。

「21才のA君、以前から軽度のアトピー性皮膚炎だったが、7年ほど前から悪化。身体のあちこちの皮膚が赤く腫れ、乾燥・痒みが強い。搔くと出血しやすくカサブタになる。喉が渇いて冷たい物を好む。やや疲れやすく、食後眠くなりやすい。皮膚症状は、温まったときや睡眠不足、疲労で悪化しやすい。」といった症状でした。「脾気虚弱」と「血虚血熱」が併存していると考え、「標治」と「本治」の観点から参苓白朮散と温清飲を服用して頂くことにしました。腎精や陰血を補うことと、血熱を冷ますことを目的に、瓊玉膏も併用しました。4ヶ月ほど経過し、悪化、緩解を繰り返していましたが、現在は赤み、痒みも落ち着き、ゴワゴワしていた皮膚も柔らかくなってきました。さらに落ち着いたら、「本治」に集中した治療に切り替えようと思っています。

「標治」と「本治」は患者さんの症状に合わせて、段階的に、或いは併行して行います。どのような場合でも、漢方治療において、最も重要なことは、「アトピーには、○○湯」と決めつけずに、皮膚症状や個々の体質をしっかり把握し、段階に応じて、きちんと判断して的確な漢方薬をセレクトすることです。

VOL.212 冬の養生法

漢方の聖典の一つである『黄帝内経素問』の四気調神大論には、 「冬三月、此れを閉蔵と謂(い)う。水凍り、地裂ける。陽を擾(みだ)すことなかれ。」と書かれており、冬は、万物の機能が閉蔵し、寒さが強いため、人体の陽気の損傷に気をつける必要があることを説いています。 1.寒さ対策 『黄帝内経素問』の厥論には、「陽気は足の五指の表より起こり、陰脈なる者は、足下に集まりて足心に聚(あつ)まる。」と記されています。足には重要な三つの陽経の終点の経穴と三つの陰経の起点の経穴があります。漢方では、「寒従脚起」とい […]

VOL.123 更年期障害5

「53歳の女性、閉経後、ストレスなどにより、起床時に悪心、腹痛、下痢をし、時に頭痛を伴う。疲れやすく、夕刻になると頭が重い。肩こりがひどく、寝つきも悪い。」との事。「肝気犯脾」と「肝気犯胃」を兼ねていると判断して、逍遙散と二陳湯を服用していただくことにしました。  1ヶ月後のご来局時には、症状がほとんど無く、ご本人も「ウソみたい。」とお元気そう。念のためもう少しだけ服用していただいて、様子をみることにしました。  更年期障害は西洋医学では、卵巣機能の低下によるホルモンの分泌不足、家庭環境や社会環 […]

VOL.33 腰痛

以前、当薬局の近くにお住まいで、ご主人のお仕事の関係で、関西の方に転居された40歳の女性からのお電話。「過労や睡眠不足が続くと腰が痛くなり、身体に力が入らない。痛みは突っ張る様なときと絞られるようなときがあり、お風呂や携帯用カイロで、温めたり、さすったりすると楽である。寒い日や薄着で冷やすと悪化する。食欲はいつもと変わらないが、腰痛が起きて以来、やや便秘気味である。」といった内容でした。 通常の体質は、既知の上だったので、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)と桂枝加大黄湯(けいしかだいおうとう)を […]

VOL.130 にきび ~その7~

ニキビは、皮膚科学では「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」、漢方では「粉刺(ふんし)」と称します。毛嚢と皮脂腺の慢性炎症による皮膚疾患の一つです。皮脂過多や毛孔の角化などにより皮脂の分泌がスムーズに行われないと炎症を起こし、顔面をはじめ胸部、背部、肩部などに多く発症します。ニキビは毛嚢に一致して生じ、発展過程において面皰、丘疹、膿皰、結節、瘢痕、痘痕などがみられます。そのため、臨床では往々にして数種の段階のニキビが同時に存在します。 「K君は17才の高校生。5年ほど前から、赤みが強く熱感のある […]